ある青年シェフとの出会い

先日、ある若いシェフとお会いすることがありました。
彼はとても洗練された料理人にもかかわらず、謙虚な方です。
端から見て実力がある方でも、本心で自分はまだまだ未熟だと思う方は、
ずっと成長し続けると私は思っています。
彼は心から自分はまだまだだと思っていらっしゃるようで、
人はその思いを持っている限り努力し続けますので、
彼はきっと素晴らしい物を身につけられると思います。
失敗も受け止めて考えて改善努力をすることや心から謙虚であることは、
実力をどんどんアップするためには必要な事だと常々思っています。
手前味噌ですが、
私自身、この歳でやっと料理を教える資格がある者に近づけたかなと思うのです。
と言うより終わりはないのだと思います。
料理が上手いとは、なかなか納得できないのです。
でも私は失敗を誤魔化さずに言い訳せず、反省して改善してきました。
そのお陰で、研究努力をし続けられたのだと思います。
その結果、他の方より少しは知識や技術や料理の心を学べているので、
教えていられるのです。
いえでも。。。これからも、もっともっと学びたいですよ。
料理は奥が深くて一生掛けても学びきれないと思っています。
100%はないのではと思うのですが。
これは、どの分野でも同じだと思いますけどね。
私はただ家庭料理を教えている者で、
いわゆる料理人とは違うので偉そうなことは言えないのですが、
プロとか一流とか巨匠ってなんなのか分からない私です。
いったい誰が決めるのでしょうか?何か基準になるのかしら?
実際に食べて下さった方の反応や感想はとても大事ですよね。
心から喜んで頂けるのが一番ですからね。そういう意味で認めて頂きたいものですが、
結局は自分自身がどれだけ納得するかではないのかしらと、何時も思うのです。
如何でしょうか?これって自己満足の域を出ていませんかしらね?
だからいつまで経っても私は・・・???
ウーン分からん!ですからこういう議論は止めにして、楽しく料理しましょうっと!


私は料理人を見る時は、指を見る事が多いのです。
しなやかで美しい指。。。
それは美味しい物を作れると言うことと、
芸術的に美しく仕上げる指だと思うからです。
その青年シェフはその指の持ち主。
美味しく美しい料理を作るシェフ。。。


以前、私の友人が言っていました。
彼女は海外で彼のお料理を頂くチャンスがあり、
海外での食材にもかかわらず、今まで食べた和食で一番美しく美味しかった
と言っていたのです。
帰って、心を入れ替え?なぜだか包丁を研いだと。。。???
いいな〜。私はそんなお料理を食べてみたいと思いましたし、
どんなシェフなのかしらと興味津々でした。
でもでも、なんと私もその若きシェフと話すチャンスを頂きました。
寡黙ですが、誠実さと料理人気質はヒシヒシと感じ取れました。
おごり高ぶらない彼に好感を持てたのです。
彼に「○○さんが今まで食べた和食で一番美味しかったと言っていましたよ」と
伝えたのです。
彼は
「そんな事ないですよ、ただその方のためだけに作る料理なのでそう思っていただけたのです」と。。。
ガーン!
彼は誠実で人を大切にされる温かい方なのですね。
本物の『お・も・て・な・し』の心をしっかり持って、お料理をされているんですよね。
料理って人柄が出ますものね。


私は忘れていました。
そうだったのです。
お料理は食べる人の美味しいと思った瞬間の幸せな笑顔を思い浮かべて作る物でした。
本当は、毎回その方へのスペシャルなんです。
ですから、より安全でその方に合った食材を選ぶのも大切なんですね。
そしてそれが身に付いて、自然に当たり前に行えるよう。。。
ずっとそう思って作って来て、子供達にも生徒さんにもそれを教えていたはず。
でも、今の私はレシピ作りと教えることに追われてしまい、それを忘れていたのです。
味中心だけの姿勢になっていた気がします。
誰のために、誰の笑顔のために。。。
忙しすぎて薄れていたのです。
歳を取ってきついとか、全てがのろくなっていたのを理由にしていたのかも知れません。
本来なら歳を重ねるごとに、人間が練れて大切な事は自然に身に付いていて行えるはずですよね。
出来ていない!
私は未熟だとつくづく思いました。
その青年シェフと出会えたことによって蘇りました。反省です。
そうそう!初心に戻らなくっちゃ!・・・感謝です。


仕事柄、結構若い方と接する事もあるのですが、疑問に思うことも多々ありました。
日本、大丈夫かしらと思うこともありました。ごめんなさい。これは若者に失礼ですね。
本当に人との良い出会いって年齢は関係ないんですね。
若い方からも、いくらでも学ぶ事があるのだと、今回つくづく感じたのです。
良かったわ。


料理の世界で世間で言う、
有名シェフや巨匠になることを目指さなくても良いのではないでしょうか?
それは食べてくださる方々が感じて認めてくれることですもの。
彼の謙虚さと情熱は、彼自身の実力を大きくアップし続けると私は思います。
これを忘れずに、楽しい気持ちで頑張って素晴らしい料理人になって頂きたいです。
そして食べた方に喜んで頂けるよう、そして自分らしい料理を作り上げていって欲しいかな。
出過ぎた事を言ってごめんなさい。
でも心から応援しています。


何だか清々しい出会いに感謝しています。Kシェフありがとうね!